氷河期男の咆哮

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産後クライシスの次はパタニティーブルーですか

出産の幸せと夫婦の最大危機はコインの表裏

 「産後クライシス」という言葉が広がったのはここ5年ぐらいですかね。子を持つシングルマザーへの調査で、0-2歳の期間での離婚が離婚全体の3割を占めるというアレです。少々番組や記事のネタ作りのために恣意的に利用されているデータかなという感じもありますが、実際にそうなってもおかしくないと思います。

 出産は幸せへの扉であると同時に、夫婦間の戦端でもあるわけです。僕にも経験がありますが、出産中でも妻の情緒は激しく不安定になりますが、産後のそれは妊娠中のそれの比ではありません。そもそも男は赤ちゃんが無事にこの世に生まれ出てきてくれて、初めてパパ感を味わうのに対して、ママはお腹に居るときからすでにママなのです。この辺の認識の差はなかなか埋めるのが難しい。

 いざ生まれると生涯で最も多忙になるママは日増しに疲弊します。初産であれば尚更でしょう。実家が近いなど頼れる環境があればまだマシですが、毎日帰りの遅い旦那ひとりで待つママはどんどん追い込まれていきます。ピリピリするのも無理はありません。「オレ育児手伝ってるじゃん」なんて思うともうお終いです。それは相手からすれば小指の爪程小さな助力でしかないのですから。

「やってるつもり」の行き違い

 とはいえ、やっぱりせっかく手伝ってもダメ出しされると、パパも気分の良いものではありません。しかし、そんなことで争うのは不毛です。ママはパパに怒っているのではなくて、我が子を守るために神経質になっているのです。哺乳類が赤ちゃんも守るために攻撃的になるのは極めて当たり前のことです。ダメ出しで切れるのは子猫を守るために前に出た親猫を蹴り飛ばすような無慈悲な行為なので、怒ってはいけません。

 この時期はお互いの共通認識が子供がいなかった頃とは劇的に変化しているのです。まず、それをすり合わせることが、苛立ちのぶつけ合いを回避するための最良の手段です。そのためには男が優しくなるしかありません。何に対して怒っているのか、どういう所が気に入らないのか。理不尽な怒りもあるでしょうが、決して男は怒らずにきちんと聞き、話し合うべきです。そうすることでママの苛立ちの幾ばくかは解消されるはずです。男が折れる。これが最高の解決策です。最愛の妻と子を失うことに比べればなんてことはないはずです。

お父ちゃんも産後鬱!?

 しかしここへきて、その状態を苦にする「パタニティーブルー」推しのブームがやってきましたね。会社での圧力、いくら「イクメン」しても納得してくれない妻。やり場のない鬱屈。折れる心。それは男も同じだと。しかしまぁ、よく次から次へと何か病気を作りたがりますね。精神科へ誘導するための陰謀ではないかと勘ぐってしまいます。

 こういう問題は一般論で語れるものではないというのが大原則だと思うんですよ。人間の容量はそれぞれ違います。それは精神的にもそうですが、時間的にもです。帰りが遅ければ必然的に育児に関わる時間は減ります。世の中が「イクメンイクメン」なんて言っていると「俺やらなきゃ」「私もっとやってもらわなきゃ」そんな考えが生じるのも無理はありません。それは間違いです。芸能人がよく前面に出てきますね。鈴木おさむとか。そりゃいいことですよ。育児に一生懸命なのは。いいことはあっても悪いことなんてひとつもありません。

よそはよそ、ウチはウチ

 悪いのはそれを世間にアピールすることです。それも世の中のママが楽になったり、パパ子育てが楽しめたらいいという善人的な考えなのかもしれません。そうあってほしいけど。だけど、それは驕りです。彼は世間一般で言う所の一般庶民のお父さんとは大きくかけ離れています。育休が取れないのは当たり前。子供や妻に融通して勤めることができる父親なんて世間ではごく一握りでしょう。そうでない人をサンプルを礼賛したり、周知するのはあまりにも無意味です。「男も育児しようぜ。こういう所がいいよ」みたいなノリのうちはいいんです。実際、やった方がいいと思いますし。でもそれはいつしか「男もガッツリ育児。イクメン当たり前」にすり替わってしまってるんですよね。

 育児にスタンダードなんてないはずです。まず赤ちゃんがそれぞれ違う。奥さんの性格も違う、旦那の労働時間もなんも各家庭バラバラです。大事なのは自分が何をできるか、何をパートナーに求めているかをはっきりさせることです。育児はお互い「私はやっている」になりがちです。「やっている」は主観なので、コンセンサスを取り付けなければなりません。イライラを募らせてSNSに愚痴っている人は最悪の状態と気付くべきでしょう。

 それを言う相手は目の前にいるパートナーです。多少の諍いにはなるかもしれませんが、それは建設的かつ必要な戦です。お互いもう親なのだから落ち着いた話し合いの戦いができるはずです。そこでもう一度思い出せばいいのです。何のために争っているのか。この世でもっとも愛する相方と我が子のためです。

 

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