氷河期男の咆哮

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日銀追加緩和を決定-今後のシナリオは-

 2016年7月の日銀政策決定会合の結果、追加金融緩和を決定しました。思えば「黒田バズーカ」なる言葉が行きかうようになったのは2013年。第一次安倍内閣が発足した翌年のことです。

 国策として推し進める円安・株高に、さらに拍車をかけたのがこの黒田バズーカです。日銀の緩和政策によって1ドル92円だった円が100円を超えました。同じく日経平均は11,000円台から14,000台へ。市場にも世間にもインパクトを与え「アベノミクス効果」ともてはやされ始めました。

 過去にも為替介入などによる短期での大きな変動は存在しましたが、情報伝達と金融システムの発展した現代ではその規模はまったく異なります。このファーストインパクトがあまりにも強烈だったため、その後も日銀政策会合はサブライズを用意しなければならないという十字架を背負わされることになりました。

 その後為替は130円、日経平均は21,000円目前というところで、ついに息切れ。日経平均は現在の段階でピークから20%以上値を落とし、為替は再び90円台目前。多くの経済専門家がその効果を訝しみ、金融緩和は今や批判の的となっています。

 

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で、結局金融緩和って何だったの?

 詳述しては経済紙や新聞と同じになってしまいますので、わかりやすく単純化することにします。要は大企業にお金をばらまいたのです。ばらまかれた大企業がそのお金を使えば、従業員の給料も上がる。仕事も増える。失業者が減って、物価も上がって、景気がよくなってハッピーハッピーというのが安倍内閣と日銀の狙いでした。これがいわゆるトリクルダウンというやつです。

 先行例としてアメリカがある程度の成功を収めていたので、世界中の先進国が金融緩和に舵を切っていたので、日本もこれに倣ったわけです。結果、欧州も株高を招きました。しかし、結局株価と一般庶民の暮らしはまったくもって関係ありません。そもそも人口減の状態にある日本と、意欲的にビジネスを開拓する世界の通貨の中心であるドルを司るアメリカを同じ土俵にあげるのが間違いです。

 お金のあるところにお金を配る政策は、必然的に貧富の差を生みます。せっかくもらったお金を世の中に還元するような銭形平次のような経営者はいませんから。そんな感覚ではすぐ倒産するからです。

MP切れの日銀、今後のシナリオは下落一途しかない

 イギリスのユーロ離脱ショックにより、一気に円高株安に振れた相場は、かなり早いスピードで離脱前の水準に戻しました。これは与党自民党参院選圧勝によるものです。基盤を盤石とした政府が市場に更なる一石を投じることを投資家が期待し、それに安倍総理が答えた結果です。黒田総裁の発言には否応なしに「サプライズ付」金融緩和の期待が高まりました。時同じくしてヘリコプターベンこと前FRB議長バーナンキが来日し、ヘリコプターマネーが日本で実験されるのかという思惑が市場を揺さぶりました。今日の会合のポイントは以下の5点でした。

  • ヘリマネがもしかしたらある?
  • マイナス金利のをさらに進める?
  • 50年、永久国債を発行する?
  • さらなる通貨供給があるか?
  • これ以外のサプライズ

 結果はETFの買い入れ増額という答えに終わった。相場は乱高下したものの最後は前日の終値を92.43円上回る16569.27で引け。暴落は避けたもののインパクト不足は否定できず、この辺が頭打ちになる公算が大きい。

 そもそも日銀は大きな手を打つようなMPは残っていない。メラを小出しにして連発しているうちにメラゾーマが打てない状況に陥ってしまっている。残念ながらゲームではないので、MPは回復しない。現実世界は先がどれだけ険しかろうとリセットすることはないからです。

 いつの間にか市場にインパクトを与えることが仕事になってしまった日銀は、いま一度中央銀行である自分たちの仕事を思い出してほしい。投資家にサプライズを与える奇術師のような仕事は黒田氏の本職ではないはずです。

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