【書評】師弟
もうすぐ2018年のプロ野球ペナントレースが開幕します。本書は、昨年96敗という絶望的としか言えない成績だったヤクルトスワローズの元監督ノムさんと、ヘッドコーチに就任して鬼軍曹ぶりが連日取り上げられる宮本慎也との共著です。
ノムさんは本書文中で述べている時点で著書が120冊(笑)けっこう読んだつもりですが、1割も読んでませんでした。
それだけ書いてるので内容はカブりまくってるんですが、なんか読んでしまうんですよね。新ネタが見たくて。
今回は共著ということで、ネタに広がりを見せています。
目次
野村克也 監督として
宮本慎也 選手として
師弟 見どころ
- 川崎にシュート伝授
- 小早川開幕戦で斉藤雅から三連発
- 新庄にピッチャー
- 松井を退けて伊藤智仁を1位指名
- 外野手監督不適合論
真中満について
2015年の日本シリーズについては「真っ向勝負、力勝負を挑んでいるように映った。(野村監督の教えである)弱者であることを武器にし損なった」と評しています。
確かに同年のヤクルトはあまりにも無策に敗れ去り、ソフトバンクの強さだけが際立ったシリーズでした。
近年の日本シリーズは2013年の巨人VS楽天を最後にまったく盛り上がりを欠く展開になっているのは、弱者たるセリーグの無策ぶりのような気がします。
バレンティンについて
「ピッチャーゴロを打ち、バッターボックスから一歩も走らずに帰ってきた選手を、初めて見た」
バレンティンの左翼の守備はほんとスゴいですよね(笑)あれは投手と険悪なムードにならないのでしょうか。
2018年、宮本コーチは彼の緩慢プレーを改めることができるのか。
谷繁元信について
「ときどき使うインコースのタイミングが絶妙」で、現役時代ほとんど打ったことがないと絶賛しています。
仁志敏久について
山本昌について
「振りかぶったとき、口をキュっと結んでいたらストレートで、反対に緩んでいたら変化球」
対山本昌との通算成績が気になるところです。
菊池・今宮について
「二人とも守備範囲が広く、肩も強いので、華やかに見えますが、そのぶん細部はまだ洗練されていません」
現役2トップの内野手と呼んでもいい彼らについて、10年後に答えは出ているでしょう。
とまぁノムさん譲りの批評が他にもあります。鋭い観察眼と「見えないモノを可視化する能力」は文筆家として優秀です。
今後、監督として成功することがあればきっと著書はたくさん売れると思います。目指せ120冊!!
総評
僕は宮本が選手時代から言っていたと思うのですが「野球を楽しいと思ったことはほとんどない」という言葉が非常に印象に残っています。
シーズンオフの間、「うるさ方」としての宮本コーチの姿がジャンジャン報道されていますが、嫌われても怒る。言うべきことは言うというのが本書を通じても伝わってきます。
この本は2016年初版なので、当時はまだコーチとしての打診もなかったわけですから、シーズン直前の今になって読んでみると「有言実行やなぁ」と頷く。
山田選手への言及は僅かでしたが、今シーズンのヤクルト浮上最大のカギは山田が復活するか否かというところでしょう。
本書を通じて語られる、野村、宮本イズムが果たして現代のヤクルトに受け入れられるのか注目です。山田がまた悪いようだとチームが空中分解ということが心配されます。
私見では監督ではなくヘッドに据えたのは禅譲路線で、チーム状況が厳しいということでとりあえず小川監督に矢面に立ってもらっているんではないでしょうか。
文中でも宮本は小川監督がスカウト時代に獲ってもらったと感謝の弁がありますので、2人の関係は良好なのでしょう。
そしてノムさんはほんんんっとに野球オタクなんですね。そんなノムさんが僕は大好きです。ストライクゾーンを9つに分ける野村スコープは特許取っておけばよかったのに。あれがないと今の野球ゲームは機能しないですよ笑
でも、ノムさん。心配です!!2017年にサッチーが急死してから、ドンドン元気が無くなってるじゃないですか!僕はもっともっとノムさんの本が読みたいです。
最後にノムさんから宮本へ贈る言葉で締めたいと思います。実現してノムさんを元気づけて!!
ただ、ひとつ、ささやかな夢があるとすれば、宮本と、稲葉が監督として、対戦するところを見てみたい。二人がどんな野球をするのか。
こんな弱気な言葉だけでは寂しいのでノムさんらしい名言をもひとつ
負けは、負けたと思った瞬間が負けであり、負けだと思わなければそれは勝利につながる