氷河期男の咆哮

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【書評】小泉進次郎と福田達夫

287P

著者 田崎史郎

読みやすさ ★★★★★ 

 

小泉進次郎という男はどのような男なのか?小泉純一郎元首相の息子でイケメンで人気抜群。僕の手持ちの情報はそれだけでした。少なからぬ人が同じような印象を持っているのではないでしょうか。

本書は進次郎だけではなく「あなたとは違うんです」のセリフで一世を風靡した(してない)福田康夫元首相の息子、福田達夫との対談本です。 

読後、きっと小泉進次郎の印象は変わります。

 目次

小泉進次郎福田達夫のプロフィール

それでは簡単に2人の略歴を紹介しましょう。

小泉進次郎

1981年生まれ。関東学院大学卒業後渡米。コロンビア大学大学院卒業。父・小泉純一郎の秘書を務め2009年の衆議院選挙で初当選。以来、現在まで4選の現職。

福田達夫 

1967年生まれ。慶応大学卒業後、三菱商事に就職。父・康夫が官房長官を務めた2004年に退社し秘書を務める。2012年の衆議院選挙で初当選。いわゆる「魔の2回生」世代。以来、現在まで3選の現職。

ということで、進次郎は民間を経験せずに議員になった一方、達夫はいちど商社大手の三菱企業で働いています。

ちなみに達夫の父(康夫)と祖父(赳夫)は共に元総理なので有名ですが、進次郎も純一郎元首相だけではありません。曾祖父から4代続く衆議院議員家系です。

2人ともバリバリの世襲議員なわけですが、両者共、父親が跡を継がせようとしたわけではありませんでした。

純一郎氏は息子2人に「おまえたちは政治のことは考えなくてはいいからな。好きなことをやれ」と子供の時分よりずっと言っていたそうです。

長男、孝太郎氏が俳優になったのはご存知の通りですが、進次郎は大学生のとき、既に跡を継ぐと父に宣言していました。

一方の達夫も父から「政治というのは継ぐ仕事じゃない。だから、継ぐという考えは必要ない」と言われていました。政治家を目指すことになったきっかけは、父が官房長官時代にスタッフが足りずにヘルプで入ったことでした。

当初は三菱商事に帰るつもりが、諸事情でなし崩し的に政界に居残ることになり、イヤイヤというわけではないのでしょうが、結局跡を継ぐことに。

動機としては進次郎の方が遥かに高いといえるでしょう。

小泉進次郎福田達夫の内容

本の内容的には序盤は前述したような世襲あるあるから始まり、親父トークがあって、あとはほとんどが農協に絡む2人の仕事内容に費やされています。

で、最後は2人を知る第三者からみた進次郎と達夫話。このパートで菅官房長官のインタビューがあるのが興味深いところです。

仕事ぶりに関しては一回り以上年下の進次郎が、部下として達夫を招いてこき使うところが非常に面白いですね。

こき使うというと語弊があるかもしれません。対談中、何度か出てきますが進次郎は父と同じ猪突猛進型のタイプです。

大将自ら先陣を切って乱戦に持ち込み、後処理や根回しを達夫がする。この構図は小泉純一郎元総理とそれをサポートした福田康夫官房長官と同じです。

飛信隊の信とそれを支える河了貂と羌瘣みたいな感じですかね(笑)あえて使われる達夫の懐の広さが、なんかいい感じで好感が持てます。

「ワンフレーズ首相」なんて呼ばれた小泉元首相ですが、なぜワンフレーズかという理由も語っていまして、要はいっぱいしゃべるとマスコミがいるところだけ使うからです。

「関与してたら議員を辞める」とかいらないこと言わない方がいいんですよね(笑)

その他、やっぱり小泉純一郎エピソードはこの本の見所のひとつなので、詳しくは書かないでおきます。

小泉首相の後世の評価はもうちょっと先になるんでしょうが、功罪あるのは間違いありません。

僕は現役総理のときはあまり好きではなかったのですが、彼以後の総理と比べるとちゃんと総理大臣してましたよね。

政治家小泉純一郎ではなく、父親としての姿が書かれているんですが、父親としてもやっぱり常人にあらず非常に絵になる男です。

進次郎もこれから偉くなっていって型破りな男になっていくのかな。

総評 

おぼっちゃん達の雑談本だと思って読み始めたんで、めちゃめちゃ印象変わりました。というか、むしろさっさと「お前ら早くトップまで駆け上がれよ」とまで。

日本の政治体制はおかしいんですよね。長老大杉で。何年も前から言われ続けてることだけど、普通に考えて70歳の爺さんが100年先の日本のこと考えて政治しないよね。

彼らぐらいの世代がもっと政権の中枢に食い込んでいってくれないと、100年後、日本は無くなりますよ。

で、おぼっちゃんなんて勝手にレッテルを貼ってましたが、少なくとも進次郎はけっこう順風満帆というわけではないということを知りました。

そもそも実母知らずに育ったていうだけでも、なかなかにハードなわけですが、初めての選挙でも世襲のシンボルのように扱われる逆風の中、政治人生をスタートさせてるんですね。

感じたのは進次郎は、出だしでマスコミに大バッシングくらって、手のひら返しを目の当たりにしてるんで、めちゃめちゃ警戒してます。恐怖心と嫌悪感が入り混じってる感じじゃないでしょうか。

そして、総理の息子に産まれるのは絶対イヤです。進次郎の子供のときのエピソードで強烈なのがありました。まぁこんな感じです。

「ねぇ君コイズミくんだよね」

「そうだよ」

「お母さんがギインの息子だから仲良くしときなさいだって」

「・・・」

最低なオカンおるな!(笑)

僕はこんな環境で健全に育つ自信がないです。

とまぁ、なんだか礼賛するみたいな感じになっちゃいましたが「政治の未来」を久しく感じることがなかったので、若手議員の思っていることを読んで少し心が晴れやかになったわけです。

そりゃまあ、まだまだ青臭いのかもしれないんですけど、人々が期待し夢を見るのは、その青臭さになんですよね。

ちょっと触れるスペースがあまりにも少なすぎましたが達夫さんにも、かなり期待しています。なんたって商社で培った民間とのバランス感覚の持ち主です。いつか大臣として発揮して頂きたい。

それでは将来への期待の意味も込めて進次郎の熱いハートをお伝えする言葉で締めたいと思います。

淡々としていたら、政治はできない。

熱くないと。

それは、やっぱり政治は人だから。 

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