氷河期男の咆哮

ロストジェネレーションサラリーマンがお送りする育児、書評、時事情報です。

【書評】トマト缶の黒い真実 ゲッベルスと私 ベルリンは晴れているか

せどりを初めて半年になり、いろいろ慣れてきたので作業が効率化され時間が余るようになってきました。始めた当初は仕入れだけでひーひーなってたので慣れってのはえらいもんです。

この半年は僕の自由時間はすべて子供とせどりに費やしてたんで、唯一の趣味である読書からすっかり遠ざかってましたが、近頃は本読めるぐらいの時間の余裕ができてよかったです。

金を稼ぐのは楽しいですが心が潤わない人生ってつまんないですから。というわけで以前チビチビ書いていた書評も続けたいなーという次第です。

目次

トマト缶の黒い真実

どこにでも売ってて誰でも口にしたことがあるであろうトマト缶に、実は現代資本主義の縮図が詰まっているという、かなり読み応えのある一冊です。

中国、アフリカ、ヨーロッパと飛び回り、ヒエラルキーの上層から下層に至るまで、現場取材もしていて、これぞジャーナリズムではないでしょうか。

現代のみならずトマト缶の誕生の歴史、ひいては資本主義の勃興期にまでも触れられています。

なんだか読んでてつらくなったりするんです。アフリカを食料と武器の廃棄地帯として平然としている先進国にガッカリして。「先進国っていうか人間ってなぁ」って。

たったひとつ、イタリアのゲットーで無償で働く医師のくだりには人間の光を感じてほっとしました。

本書読後は安いトマト缶買うのはイヤになることうけあいです。もっと売れてもよさそうな傑作だと思うのですが、食品メーカーの都合上、広告的にプッシュできないのかなと勘繰ったりもしてしまいます(笑)

ゲッベルスと私

同名タイトルの映画の書籍化です。ゲッベルスといえば、もちろんナチスの広告塔ゲッベルスのこと。彼の下につかえた「普通の女性」による当時の回想録です。

ヒトラーが好きとか、ナチスが好きとかいう意味ではなく、この時代のドイツに関する本はとても興味深いものが多いです。

どうしてああなったのか?なぜそれがまかりとおったのか?そして、再びそのようなことは起こりうるのか?

ナチスドイツという組織にスポットを当てた本はたくさんありますが、一般市民でなおかつ中枢に近いところにいた人の目線というのはあまり見たことがありません。

そういう意味で歴史的価値も高い作品ではないでしょうか。

欧米でポピュリスト、ナショナリズムが台頭し、世界に不安定感をもたらしている今世紀と照らし合わせて読んでみると、より一層興味深いものとなります。

日本だって10年20年後はどうなっているかわかりません。やれ自己責任だ、格差社会だと、民衆の分断を助長する要素はすでに揃ってますからね。

悪しきリーダーが現れないことを願うばかりです。

ベルリンは晴れているか/深緑 野分

たまたまナチスドイツ物が続きましたが、こちらはフィクション。ジャンル的には歴史+ミステリです。

戦中~終戦直後のドイツが主人公17歳の少女アウグステの目を通して描かれているんですが、その描写が瑞々しいわ生々しいわ。このへんは深緑さんの文才に惚れ惚れします。

描写のみならず、長編をまったく気にさせない構成の巧みさで最後までまったく飽きさせません。ナチスの圧政によって運命を捻じ曲げられていくアウグステの様は胸がつぶれるほどに苦しい。

ラスト数十ページの展開は圧巻で、僕はもう最後の一行に残る余韻に至るまで堪能させて頂きました。

深緑野分さんは僕の中でバズってて今後も楽しみな作家さんです。

おわりに

せどりやってると楽しくてどんどん深堀りしてしまいますが、たまには立ち止まって自分の世界に没頭するのも大事です。やっぱり。

せどり業界を覗いてみれば、景気のいい話ばかりで「なぜ今やらないんですか」的なマルチ商法の勧誘風のあおり文句が飛び交ってます。

人に動かされてやってるようでは結局会社員みたいなもんだから。大事なのはマイペース。へぼせどらーでいいんで楽しけりゃいいんじゃないすかね。意識低い系のせどらーで。

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