氷河期男の咆哮

ロストジェネレーションサラリーマンがお送りする育児、書評、時事情報です。

【書評】SHOE DOG

  • 560P
  • フィル・ナイト
  • 読みやすさ ★★★★

 

ナイキの創業者フィル・ナイト氏の自伝。

今でこそ世界一のスポーツブランドですが1980年から1990にかけてスポーツ少年だった僕の時代にはナイキはマイナーブランドでした。 

天才キーパー若林君もゴリゴリのアディダスかぶってましたから。みんな真似したものです。サッカーソックスもアディダスの3本線が当たり前。

そして野球はミズノ。人気2大スポーツにナイキの入る余地はまったくありませんでした。

それがマイケル・ジョーダンスラムダンクによるバスケ人気沸騰と共に瞬く間にナイキは若者の間に広がっていきました。

後発であるメーカーが世界一になるまでは、まったくもって順風満帆ではありませんでした。

そして、日本との関りがなければナイキは誕生していなかったであろう逸話が、日本でもベストセラーになった所以でしょう。

目次

ナイキとアシックス

上述したようにナイキは2018年現在も世界一のスポーツブランドです。2018年3月現在、株価時価総額はTOP2を比べると

と、2倍以上の開きがあります。(近年アディダス社が売り上げでは巻き返して、イーブンのところまできている)

ナイキの出発点は創業者フィル・ナイトと、彼が大学時代に所属していた陸上部のコーチ、ビル・バウワーマンが共同出資して立ち上げたブルーリボンスポーツ社が始まりです。

そのブルーリボン社というのは「オニツカタイガー社」という日本のメーカーの単なる販売代理店でした。

そして「オニツカタイガー」とうのが後の「アシックス」なのです。モノづくり日本時代の良きエピソード。我々氷河期時代を生きてきた人間には覚醒の感があります。

その後、オニツカタイガーとは色々あって自社でシューズを生産することになりました。オニツカとは縁が切れるわけですが、ここで再びジャパンが登場します。

総合商社日商岩井の融資がなければナイキは事業を続けて行くことすらできなかったのです。一度ならず二度までも出てくる日本。

これを知ればなんとなく溜飲が下がる思いがする読者もきっと多いことでしょう。僕はまったく関与してませんが、「日本あってのナイキ」だと思う読者もきっと多いはずです。

政治に忖度して公文書を書き換えるような人間が跋扈しているのを見ているとなおさらです。そのときはよかったんだねと。

僕はこれ日本人に売るために書いたんちゃうかなと疑ってます(笑)そらビジネスマン喜びまっせ。

フィル・ナイトが大学講師時代にゲットした大きな2つのこと

僕はこれ読んで「ほんまかいな」というほど話ができてるんですけど、商売が軌道が乗る以前、フィルは大学で講師をしていました。

そこでありえないような運命的出会いを果たしいます。偉人の歩む道は神がすでにレールを敷いているのかと思わされます。

まず、フィルの生涯の伴侶となったペニー・ナイト。彼女は当時の彼の教え子です。ラッキーなのは嫁さんなのかフィルなのか。

「お前何しに行っとんねん!!」と、激しく突っ込みどころですが、偉人とはこのように人生ができているのかと。

そしてさらに!ナイキのロゴマークの発案者をご存知の方は少ないでしょう。それもまた、彼の教え子という。彼女の名はキャロライン・デイビットソン。

繰り返しますが、この2点に僕は強烈な違和感を感じています。「そんなことある!??」と言いたいけど、あるからしょうがないですね。

不遇の時代にあってもこの運の強さ。はたまた実力なのか。

www.espn.com

総評

 僕はこの「日本との意外な関係」と「嫁とデザイナーゲット」の部分を鮮烈に感じました。その他はフツーのサクセスストーリーです。

親に資金援助してもらったり、とてつもなく恵まれた環境ではあったと思う点はあります。

ですが、最終的に現在への道を切り開いたのはフィル・ナイトが背負ったリスクに対する見返りであることは間違いない。

まれに失敗知らずの天才経営者がいますが、伝説的創業者は基本的に凡人の想像できないような損失を抱えながらも、そこから這い上がった人たちです。

現代はインターネットという仮想空間ができたことにより、物を売らなくてもシステムやサービスを構築することで成功するというビジネスが主流になりました。

ですが、フィル・ナイトの時代はモノ売ってなんぼという時代です。すなわち大きなリスクを取らなければ大きくなれない、止まったら死ぬとう回遊魚状態。

おまけに、メインバンクに突然切られたり、先発業者からのイジメで政府から2500万ドル要求されたり、FBIに逮捕されそうになったり、常人では切り抜けられないような修羅場をくぐっています。

この精神力たるや。僕は本書読後、フィルは経営者とうよりは賭博ジャンキーのカイジの姿と照らし合わせてしまいました。

だってどこかでケツまくってたら今のナイキはナイですからね!知性と実力は確実にあるんでしょうけど、大部分博打ですよ、この商売。

最後は、勝負師らしいそのことばで締めくくりたいと思います。

 人生はゲームだ。その事実を否定しプレーを拒むものは、脇に取り残されるだけだ。

 

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