【中古本せどり日記】2ヶ月目第1週を終えて収益化が視界に
関西も早々に梅雨入り。部屋にナメクジが出てきてビビりました。せどりも早々に2か月目。1週目を終えたところで、先月積んだ在庫が活きてきた感じです。
活きてきたはいいですが、どうもこれまでのペースでやっていては回らなくなってきてもいて初心者の壁のようなものにぶち当たってる気がします。
目次
2018年6月 1週目を終えて
まず喜ばしいのは30日売上の値が徐々に最高値を更新しつつあることです。
ようやく17万円台に乗ってきました。
売上から手数料と送料が引かれるんですが、先月の仕入れがおよそ165,000円だったのでペース的には利益が出るラインが視界に入ってきた感じです。
今月も同じ仕入額だとして、売り上げのペースがこのままなら2か月目からは利益が出てくる想定です。
ただひとつ問題が生じていて在庫が増やせない。。。
5月スタート時は在庫が40冊程度だったんですが、今月はここまで平均90冊程です。在庫が倍になった分がストレートに売上に繋がってるわけですが90冊から在庫が増やせなくなってしまいました。
理由は作業が増えたからです。検品、登録、出荷、値付けの作業が倍になったんで、ちんたらやってると仕入れの時間が取れなくなってしまいました。
このペースを守っていてもいいんですが、おそらく利益の上限が6~8万あたりでそれ以上伸びなくなります。
そもそも3万稼げりゃいいかなと軽い気持ちで始めた副業なので、十分と言えば十分なのですが、やっぱりやれば増えることをやらないのは非常にもったいない。
ということでツールを導入したり色々と現在検討中です。
仕事と子育ての合間を縫って確保する平日2.5時間×5(1週間)×4(1か月)=50時間を使って月収6~8万ということは時給1,400円前後ですね。
夜勤のバイトや少々キツい肉体労働、派遣社員の時給ぐらいでしょうか。可能であるなら2,000円台までパフォーマンスを上げたいところです。
中古本にも2匹目のどじょうはいるのか?
リピート=正解ではない
利幅を抜ける商品をリピートするというのがせどりのセオリーだと思うのですが、これは中古本にも当てはまるんでしょうか?
これについて僕は成功も失敗もしました。中古本の価格というのは不動産と似ているところがありますね。
価値があるものなら下がりきったところで止まるので値崩れしにくい。逆に新刊はあっという間に値を崩しますし、ベストセラーは確実に中古市場ではゴミになります。
ベストセラーでもない商品がAmazonで1円になってるのは書いてる人としてはどんな気持ちなんでしょうか?(笑)市場というのは実に正直です。
市場は常に正しい
これについて余談をぶっこみますが、1986年にアメリカのスペースシャトル「チャレンジャー号」が打上げ直後に爆発炎上、乗組員は全員死亡するという参事がありました。
僕は小学生だったのですが衝撃的な映像を覚えています。その事故の瞬間市場に何が起こったか?
関連銘柄4社が急落しましたが、時間が経過するにつれて値を戻しました。そのうち「サイオコール社」だけは買い手がつかず取引停止になりました。
後の調査で、同社製品の欠陥による事故だと結論づけられたのですが、その時はまだ事故原因の詳細は発表されていなかったのです。
インサイダー取引の可能性が疑われましたが、最終的にそれは否定されました。現在もこの件は市場がいかに正確であるかということを示すベンチマーク的な逸話になっています。
需給のバランスで中古本も値が崩れる
話逸れまくりましたが、そういうことで中古本市場の価格も自然と「需給の関係」と「本の価値」に応じた値になります。
限定品などこの世に僅かしか存在しないものは、いつなんどきも高値がつきますが、「一時的な需給のバランスの乱れによる高値」は必ず崩れます。
Amzonが在庫を切らした人気商品がこの好例です。在庫切れ直後こそ高値でさばけますが、プレイヤーが一気に集まるので、いずれ値が下がります。
そこへAmazonさんが帰還されるともう投げ売り状態になるので、この辺は初心者は引っかかりますね。僕は3回ぐらい引っかかってようやく学んだアホです。
プレミア本は手に入らず、高値で売れる本はみんなが集合して値が下がるので
結局必勝法はないんですよね。そこは株と一緒です。
こんにちはサヨナラこれいくら?
というわけで今回は僕がリピートしてうまくいった本と泣きを見た本を紹介したいと思います。
ラテン語初歩
これは1度目はBOOKOFFで見つけて500円で仕入れました。その頃はAmazonが在庫切れで売値3000円超えたんですね。
これに味をしめて2回目は1,600円で仕入れたところ、直後にAmazon復活。現在塩漬け状態でございます。
絵に描いたような失敗例ですね。ちなみにラテン語は学校で習ったりするようなメジャー語ではなく、研究者向けの言語なんでラテン語本はけっこう価値が高いですよね。
しゃべっていいとも中国語 中西君と一緒に中国へ行こう!
なんなんでしょう、この突っ込みどころ満載のタイトルは。なぜ中西君をチョイスしたのか、タイトルにまで登場する中西君は何者なのか気になってしょうがありませんが、中国語がわからないので何もわかりません。
ただ、この本は800円で2度仕入れて、2回とも2000円以上で売れました。学校の教材っぽいですね、どこかの。現在はAmazon在庫が復活していて気持ちよく逃げ切れました。
ラテン語の借りを中国語で返した感じです。
家庭でできる自然療法
最後のこの本は3回仕入れて仕入れ値も売値もバラバラでしたが、一応三回とも利益が出た成功例です。確実に売れるので安く手に入ればいつでもリピートしたいですね。
初版が1978年の本で、Amazon販売はありません。モノレートで見てもかれこれ5年ぐらいずっと売れ続けてますし、これこそ価値ある本ということなのかもしれません。
民間療法って昨今はうさんくさい感じで取り上げられることが多々ありますが、すべてを否定するのは乱暴ってもんでしょう。
なんせ本書は足掛け40年も売れているのだから。
まとめ
というわけで、少々脱線したり話が長くなりましたが「無条件のリピートはあかんで」って話でした。この辺は中古本の面白さでもあります。
デイトレのように1日で値動きするようなものでもないんで、値崩れ時の投げ売りは刈り取りやすいですね。
デイトレの損害が授業料になってよかったよ。。。
中古本せどりと短期トレーダーは相性いいんじゃないかなーと思います。
【中古本せどり日記】こんにちはサヨナラこれいくら?
中古本せどりを開始して1ヶ月半ほどになりました。ドラクエでいうところの「ホイミとギラ」覚えたぐらい、ウイイレでいうと「ちょっとした点取り屋」をゲットしたぐらいのレベルでしょうか。
ゲームとしてはいちばんモチベーション上がる時期ですね。ということで、本記事は月額20万も30万も100万も稼がれる中上級せどらーさんにはケツの毛ほどの役にも立ちません。「ぷ、調子こいちゃって」と嬉しがりぶりを嘲笑してもらう分には丁度いいじゃないかと思われます。
ただ、私と同様に「舟を漕ぎだしたばかりの方」「船を建造中の方」「大海を遠くから眺めている方」にとっては、実利を提供するとはいわないまでも参考程度にはして頂けると思います。なんせ私も先人たちの知恵を借りて(パクッて)実行してるだけですから。
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改めて中古本せどりの利点
前回記事でも書きましたが、中古本せどりは僕にとって利点だらけです。
1.ノーリスクミドルリターン
リスクはまぁほぼないですよね。初期投資は梱包資材と仕入れ代金だけですもん。10万仕入れたとしても、目ぇつぶって仕入れでもしてない限りは原価-手数料ぐらいは、止めたくなれば少なく見ても8割はまず回収できますし。(買値で売ればソッコーで羽ばたいていく可能性は大なので)
10万なんて、投資に使ったら日経先物225のミニでも一瞬で吹っ飛んでいきます(経験アリ。。。)。少額の投資でリターンが見込めて元本が守れるビジネスというのは、なんともド素人には魅力的な点です。
2.本好きには一石二鳥
仕入れた本は出ていくまでにタイムラグがあるので、読んじゃうこともできます。僕は子育てし始めてから読書以外にまったく趣味がないので、毎日新しい本がワサワサ入ってくるのはとても楽しいです。
装丁とかカバーのデザインだけ見てても嬉しい。これがさらに現金に生まれ変わってくれるのだから、たまりません。出品作業と出荷はまったく楽しくありませんが、労働としてはまったく苦ではありません。
3.スキマ時間だけでできる
今だいたい使ってる時間は平日の1日2時間ぐらいです。それもチョコチョコある空き時間を足しての数字なので「労働感」がないです。
人に時間を売って金銭をもらうのではなくて、自分の作った時間を金銭に換えているのでストレスも薄い。(高額本がどっしり在庫で居座っているとハゲそうになりますが)
僕はそもそも会社員で、さらに子育ての間隙を突いてお小遣いを稼げるということでこの副業にエントリーしました。
月10万や20万なんて大それたことを夢見てしまってはいなくて(今は欲出してる)、3~4万副収入あったら家族旅行とかも行きやすいな~というノリで始めたので、かける時間とリターンの塩梅がちょうどいい感じです。
そんな具合で真剣に取り組めて、楽しさもある。リスクは少ないし時間も拘束されないということで、中古本せどりは1日の2~3時間を活かしたい読書好きにはピッタリなんじゃないでしょうか。
「美容品せどり」や「ダッチワイフせどり」だったら、こんなに真剣にやってませんね。やっぱり好きなことをやるのは大事なことです。
思い出の本たち
僕はノウハウを語るような立場にありませんが、本については当ブログのメインでもあるので書いてみたくあります。
ということで、不定期にせどりで印象に残った本を紹介してみようかなと思います。
新犬種大図鑑 ¥2,000→¥4,000
これは思い出深き初めての仕入れ本です。修行がてら乗り込んだBOOKOFFで2,000円。見込みが5,000円だったので仕入れました。
最初の2,000円はドキドキしたものです。商品登録後もしばらく売れずに背後から眺めてくる犬の表紙によるハラスメントは苦しまされました。
このデカい犬図鑑は誰が買うんだろうか?獣医?ペットショップ?僕は猫愛好家ですけど、図鑑はいらないですもんね。
Amazonでの評価は鬼のように高く、確かに美しい中身でした。残念ながら5,000円の見込みは4,000円まで急落し、プレッシャーの割に薄利というホロ苦い思い出です。
アトピーが消えた、亜鉛で直った ¥500→¥1,800
これもBOOKOFF仕入です。僕自身何十年もアトピーには厄介になっているので、なんとなく手に取ったところAmazon発売なしで、3,000円近くの値が付いてました。
ま、結局1,800円まで下がっちゃたんですけど、500円本で1000円以上の利益を抜くのに僕は興奮を覚えます。医学書の当たり前感と違う、やったった感。
その性的傾向は現在も続いていて500円ぐらいの本はけっこう仕入れます。お悩み系に需要があるのはテレビと同じですよね。
本当に治るかどうかわからないのに、藁にもすがりつきたい気持ち。これがプレ値の源泉ですからなんとも世知辛い話です。
なんだか記事が長くなってきたので今回は2冊にしときます。思い出が多すぎてまだまだ書けそう。
話変わりますがよくある「高額本リスト」とか役に立つことあるんですかね?売り切れた姿を見て「おぉほんまに高く売れるやん」と確認する以外使い道が浮かばない。
だって電脳なら速攻売り切れるし、店舗には姿がないんだから。経験をデータベースにして一目で解るように蓄積するしかないですよ。初心者は。
まとめ
そういうことで明日からも頑張っていきます。今月は少し緩みが出て、旧版を買ってしまったり、発送先を入れ違いにしたりミスがあって気分ドンヨリです。
30日売上げの値が最高記録を更新していく姿をみることを捌け口にして、精進あるのみ。
中古本せどりはじめました。初月の収益は・・・
2018年4月より中古本のせどりを始めてみました。過去に何度か興味を持ったことがあるんですが、ググればググるほど「やっぱ無理よなー」と行動を起こす前に止めてました。いちばんアカンやつですね。
で、今年また思い立ちまして、2018年4月より準備して5月から本格的に始めたんですけど、初月の販売利益が4万超えました。
販売利益なんで、純利益じゃありませんよ。とりあえずド素人の1日2時間程度の作業でもでもそれぐらいはできたよとお伝えしたかっただけです。
それでは詳細の方も見てもらえたらと思います。
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※イメージです
中古本せどりを始めたきっかけ
もちろん小遣いを稼ぐことが大前提にあるわけですが、なぜ今のタイミングで重い腰を上げたのかというと理由は主に2つです。
- 本業めっちゃ暇
- 本が好き
寒風吹きすさぶ本業
僕は会社員なんですけど、最近仕事がめっちゃ暇なんです。2010年代初頭は絶好調だったんですけど、商売なんてものは単一事業の好調期はそう何年も続くもんじゃありません。ええとこ3年です。
だからこそリスクヘッジのために本業とは関係ない事業をやるんですね。東芝の原発みたいに(悪い例)。儲かってる時に次の一手を考えないと確実に後程萎むわけです。
僕は経営者ではないんで、それを考える立場にありませんから、指をくわえて見てましたが、この1.2年でビッグウェーブが来ましたよ。悪いやつが(笑)
というわけで、会社で頑張るより個人でやった方が利益になりますんで、幸い暇を活かせる環境でもあって、副業でもやろっかなとなったわけです。
「三方よし」との出会い
ここで僅かな人にしか目に留まらない書評を書いているのは本が好きだからです。それで、他の本好きの方とちょっとでも繋がれたらいいなぁと思って。
実際僅かながら繋がりができました。なんせ、周りで本読む人なんてほぼ会ったことないですから。かといって読書会行くのも二の足踏みますしね。
話それましたが、そういうわけで中古本せどりは前々から興味があったんです。そこで出会ったのがこのブログでした。僕の運命を変えたといってもいいかもしれません。
ググった中ではもうダントツで解りやすかったですね。思わず1日で通読してしまい、その気にさせられてしまいました。
せどりのブログって本に限らず最強にうさんくさい人多いんですよ。もちろん成功した人も多くいるんだろうけど。
「貧乏なサラリーマンだった私が」とか「専業主婦でもこんなに稼いだ!!」とか見ると萎えるんです。僕。基本、社会生活不適合者なんで。
文化祭だ体育祭だ一致団結して頑張ろうぜ!みたいなのを見ると学校行きたくなくなるみたいな。カイジさんと一緒ですね。
その点、この方は普通に淡々と労働しながら淡々とせどりを続けられていて、ガツガツ感がないんです。
あ、めっちゃゴリ押ししているようですけど、このブログの管理者の方とは金銭の授受は一切ございません(笑)
今から古本せどり始めたいなら、このブログをイチから全部読めばたいがいのことは理解できると思います。ほんとに。
引っ込み思案の総本山に住んでいるような僕がコンタクト取ってみたぐらいですから。
中古本せどり初月の内容
4月の中頃から準備し始め、Amazonセラーや郵便局との契約を済ませました。本格的に仕入れ始めたのは5月に入ってからで、5月の売り上げはこんな感じです。
ザックリでいきます。
売上 134,000円
販売冊数 76+7(メルカリ)₌83冊
販売利益 42,500円
最初に申し上げたように。これは純利益じゃありません。
仕入 167,000円
残在庫 93冊
販売利益は42000もキャッシュは余裕でマイナス
なので、キャッシュだけ見れば余裕で赤字です。ですが53%の在庫を残して仕入れの8割まで売上が上がったので、初月なりにうまくいったんじゃないでしょうか。
5月の序盤は在庫30~40冊で回していたのが、6月は90冊でスタートできるんで、想定では20万売上の6万販売利益ってとこです。
調子こいて仕入れの目が狂ったか、北朝鮮のサイバーテロでネットがダウンでもしない限りは到達してもらわなくては困るんで、未到達なら即引退を覚悟します(笑)
1冊あたりの利益は約500円ですね。僕の場合、300円の利益は積極的に取りにいってるので「当たり本」が平均を押し上げているようです。
初めて売れた本は見知らぬ鳥
ビギナーズラックとは恐ろしいもので、初めて売れたこの本。
仕入2400円→売値7500円でした。まず「ヨウムって誰やねん!」という疑問と共に、こんな値段で買う人間がいるのかと半信半疑でした。モノレートにはその値段で売れと書いていましたが。
繰り返しますがビギナーズラックは恐ろしい。出したらすぐ売れました。株でも競馬でもそうですが、初めてやるギャンブルはだいたい儲かります。
そして、それは往々にして大損こくための呼び水だったりするんですがね。。。そうではないことを祈ります。
作業時間
始めた当初こそ仕入れの時間が永遠に続くかのように思われましたが、今は空き時間みつけてはチマチマやって、仕入れと発送で1日2時間かかるかかからないかてところです。
土日は子どもと遊びたいので作業しません。なので平日2時間で1週間で10時間、1ヶ月で40時間。40,000÷40₌1,000で少なく見積もっても自給換算で1,000円は超えてるので安心しました。
商品登録に手間取っているので、この辺りは効率化の余地がかなりあります。もう少しシステマチックにやらないといけませんね。
中古本せどり1か月目を終えた感想
まずやっぱり在庫プレッシャーですよ。在庫。
会社の商品在庫なんて500個あろうが1000個あろうがなんとも思いませんが、個人で抱える在庫はやっぱり気が重い!
一冊積みあがるたびに、それが資産のつもりで仕入れていたとしても鉛を飲まされたように気が重くなります。
始めなんてまったく売れませんでしたし。今でも1日1件も注文がないと、総白髪になりそうなぐらい気が重いです。
ですが、その反面やっぱり見込んだ本が気持ちよく高値で売れていくのは嬉しいですよ。そのへんは株と一緒ですね。本の値下がりなんて株の暴落に比べたらプレッシャーなんて無きに等しいので健全な心で運営できます。
あと本をたくさん仕入れるのはとてもウキウキします。読書だと自分が好きな本しか読みませんが、この場合不特定多数の本が毎日やってきますから。
「なんじゃこりゃぁ!」という本も少なくありません。できることなら全部読みたいもんです。
僕の夢のひとつは寂れた古本屋で置物のように本を読んでいるジジイになることだったので、図らずしてその夢の一部分が叶う形になりました。
今後の展望については、一気呵成に突っ込む(ガンガン仕入れる)か、一旦クールダウンするか考え中です。
仕入の目さえ間違っていなければ基本的に仕入れれば仕入れるほど後で儲かりますので、このシステムが機能しているうちにフル稼働しておくべきなのか。
なんといってもAmazonの仕様変更は超無慈悲ですから。1年後にはこの構図で利益を生むことができなくなる可能性は大いにありえます。
リスクヘッジの意味で一本足打法は怖い。でも一本足打法の爆発力は王貞治が証明しているとおりデカい。悩みどころです。
2か月後には仕入その他、作業効率がさらに向上していると思うので、自然と突っ込む形にはなりそうですが、数か月後に意気消沈していたら盛大にバカにしてください。
まぁ、とりあえず楽しんで副業できてるんでアウトプットで整理するためにも、ちょいちょいブログに書いていこうと思います。
【書評】子どもたちの階級闘争
296P
著者 ブレイディみかこ
読みやすさ ★★★★
著者のブレイディみかこさんは今もっともキテるノンフィクションライターです。(私調べ)。ブリグジット前から英国の下層社会のリアルを伝えている方で、本業は現地の保育士。
僕は彼女のファンなので著書を読み漁っているのですが、本書は「ベスト・オブ・ブレイディ」でした。彼女は英国下層社会の現実を伝える国内ナンバーワン作家です。やっぱり。
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子どもたちの階級闘争の舞台・ブライトン
本書は保育士の著者がイギリスのブライトンという都市で勤めているときの体験エッセイです。
ちなみに知ったかぶりしてもしょうがないので、僕はまったく知りませんが、ブライトンとはロンドンの南部の沿岸部に位置したする都市です。
Wikipediaによると、イギリス有数のリゾート地とあるのですが読んでいるとどうもイメージが違いますね。
著者が勤める保育園は南部の白人貧困層や移民が住んでいる地域で、読んでいるかぎりそりゃまぁ酷いです。
シングルマザー当たり前、親のシャブ中アル中、DVどんとこいで、園児たちの暴力も日常茶飯事っていう、子供が愛されまくっている昨今の我が国の状況と照らし合わすと嘘のような状況です。
それとも日本でもすでにそういうことが起こっていて、僕はそれに気づいていないただのレイシストなんでしょうか。
まぁ、とにかく本書で綴られているのはそういう壮絶な保育の現場です。
子どもたちの階級闘争の内容
本書で著者が述べている点は主に2つ。
ひとつはイギリスの下層社会の絶望的な状況を綴る闇の部分です。サッチャー政権以来、仕事と人間の尊厳を奪われた白人労働階級者、いわゆる「プワホワイト」の現状はとにかくツラい。ツラすぎて逆に笑えてくるぐらい酷い。
とにかくサッチャーは現在のイギリスの文脈を語るにおいて必ず登場しますね。悪の親分みたいな感じで。そういう意味では同じように新自由主義に大きく舵を切った小泉元首相も20年後にはクソミソに言われているかもしれません。
白人労働者については以前書いた「チャヴ」の記事と同様です。
ただし「CHAVS」はイギリス左派の代表格が書いた本ですが、ブレイディさんは保育士です。しかも日本人ということで、私たち日本人にはよりいっそう解りやすいリアルな底辺社会が描かれていて、「チャヴ」は本書の主役の一端でもあります。
緊縮財政で立ち行かなくなった貧困層や、その子供たちを支えてきた保育園までもが閉鎖せざるを得ないというのは、読めば読むほど気が重くなります。
が、その一方で、そんな状況においても彼らを支えようとするイギリス人の姿や、己にはなんの責任もないにも関わらず、最下層の人間にカテゴライズされ、日々を生きていく園児たちの姿は、本書の肝であり光です。
あまりにも壮絶な環境に置かれた彼らの生活は日本人の感覚では簡単に理解できません。僕も親のはしくれとして、我が子には少しでも良い環境をなんて思ってることが恥ずかしくなってしまします。
ちなみに将棋の藤井くんの活躍でフューチャーされた「モンテッソリー教育」は、Google、Amazon、Facebookの創始者やビルゲイツも受けていたことが有名で、最近は関連本が多数見られます。
エリート教育のツールと勘違いされているかもしれませんが、「モンテッソリー」さんがやっていたことは、貧困層の子供を引き上げるための教育です。早期教育を施すことによって、そこから抜け出す方法を得るための。
それがいつの間にか、富裕層の教育方法になってしまった現実はなんとも世知辛い話です。
総評
なにがいいって、ブレイディさんはとてつもなく知的で、なおかつウィットに富んでいるですね。そして優しい。
しんどいことを笑い飛ばしながら生きている人の姿に僕は最も惹かれるのです。これ読んでて20回ぐらいウルっとなりました。
この文学的な才能は小説書かせたら楽勝で賞取るんじゃないかと思います。
アメリカやイギリスの格差社会や貧困層の問題は、近年各所で取り上げられていますが、ジャーナリストや政治家の声ってなんか違うんですよね。
左も右もなく、ブレイディさんは「地べた」という言われ方をしますが、下から定点観測した下層社会を訴えているので非常にリアリティがあります。
白人が移民を嫌っているだけではなくて、移民も落ちぶれた白人を嫌悪していることなんて、あまり伝えられることはありません。
緊縮の名の下、弱者の尊厳が踏みにじられていることも。最も割を食うのは、自分では何も状況を変えることができな子供たちです。
そんな彼らに対する著者の慈しみ溢れるエピソードが多数収録されています。
最後は、著者が園児にかけた強くて優しい言葉でもって締めたいと思います。
泣くな。泣くんじゃなくて、もっと怒りなさい。
泣くのは諦めたということだから、わたしたちはいつも怒ってなきゃダメなんだ
【書評】戦争にチャンスを与えよ
220P
著者 エドワード・ルトワック
読みやすさ ★★★★★
なんとも挑戦的なタイトルです。それだけでもう読んでみたくなりますよね。ひとつ先に申し上げておくと、本書は戦争を全肯定したり礼賛するような内容ではありません。主に軍事的戦略の観点から捉えた戦争の有用性を説いていて、そしてこれは概ね真実なんだろうなぁと思います。戦争がもたらすプラス要素とは一体何なのか?気になりませんか?
目次
エドワード・ルトワックについて
僕は著者の本については初見ですが「中国4.0」「自滅する中国」などがあります。
ワシントンの大手シンクタンク「米戦略国際問題研究所」の上級顧問で、肩書は戦略家、歴史家、経済学者、国防アドバイザーなど色々ついています。
略歴は1952年、ルーマニア生まれたユダヤ人です。その後、イタリアや英軍で教育を受け、英米の大学で学位を取得。アメリカの国防省長官府に任用されていたという略歴です。
現在も国防省やホワイトハウスにアドバイスを送るという「プロの戦略家」ということですが、まぁちょっと日本人には想像つきませんね。平たく軍師とでも思っておけばいいんでしょうか。黒田官兵衛やら竹中半兵衛的な。
訳者は奥山真司氏で戦略系の本をたくさん訳しておられます。ご自身も「地政学」という著書を記しておられて、これが2004年の出版です。
なので昨今の地政学ブームに乗ったわけではなく、ガチ地政学スペシャリストとして引っ張りだこになっているのでしょう。
この本しか読んだことありませんが、文章がスッキリしていて要点は抑えられています。ものすごい読みやすい訳なので、引く手あまたなのも頷けます。
戦争こそがもたらす平和とは
本書の核である部分は「戦争こそが平和をもたらす」という奇抜な論理でしょう。それはおおよそこのような理屈です。
戦力が拮抗していようがいまいが、すぐに終わろうが長期化しようが戦争は必ずいつか終わります。
両国が疲弊し、もう戦争を持続できない状態になれば必ず戦争は終結するのです。そして、国家は荒廃してしまったとしても、その後には平和が訪れ無駄な命が奪われることがなくなります。
それでは、戦争の終わらないところがあるのはなぜでしょうか?それは他国や関係のないものが間に入るからです。
もはや弾薬の消費地帯となっているシリアを見れば誰にでもわかるでしょう。無関係の国が介入して戦争を停止させたとしても、争いの火種が消えることはありません。
著者はそれを「停戦」ではなく永続的な戦争状態を作っているだけだとして、批判しています。
イラクはアメリカの介入によって事実上、国家がなくなりました。シリアの内戦は終わる気配も見せません。逆の例が日本とアメリカの戦争です。アメリカの一方的な蹂躙によって幕を引いた戦いの後、日本がどうなったのか。
もし、他国が介入していたら朝鮮半島のように分断されていたかもしれないというのは、まったくもってその通りだと思います。
同じ理屈を難民支援にも当てはめています。難民がいつまでも難民で居続けるのはなぜでしょうか?
衣食住を確保するためにNGOなどが難民キャンプを支援するからです。支援がなければ難民は他国に移るか自国に留まって難民ではなくなるのです。
人道や人命の価値を抜きにして考えれば、この理屈はある意味真理ともいえるのではないでしょうか?
軍事力によってもたらされる平和
非常につまらん例を出して恐縮ですが、私の家は少年時代溜まり場となっていて、日々友人たちとテレビゲームに興じていました。
高校生の頃、「信長の野望」を4Pプレイでやっていたのですが、各々がCPUをすべて撃破して陣地を確保した後は、いよいよプレイヤー同士の戦争となります。
高校生ともなると相当知恵が回ります。戦争を仕掛けるのは領土の周辺国になりますので、当然皆がそこへ兵力を割きます。
そこへ大軍でもって攻め込んだとしても、結局両者とも大ダメージを被って、国力が疲弊、そうなると当然第三者はそこへ付けこみます。
が、4人全員がこれを解っているので、結局何もできないんですね。CPU絶滅させた後はただの富国強兵ゲームになるっていう(笑)
現実の世界はここまで単純ではありませんが、軍事力による緊張が国内にも周辺国にも平和をもたらすというのは北朝鮮が本当にいい例です。
平和ボケの状態こそが却って戦争状態に繋がるというのが著者の論で、日本なんてまさにそうですよね。
日本が他国に攻められようものなら、諸外国にも大迷惑がかかるわけですから、自衛隊が違憲だどうだという論争が終わりを見せない、我が国の状態を他国は「何やってんだ??」て思ってるんでしょう。
日本について
日本でベストセラーになっているだけあって、日本に関して述べている部分が多くあります。僕にとってはめちゃめちゃ意外なのは、安倍首相をものすごく評価している点です。
アメリカと友好を保ちつつ、ロシアとの信頼関係を構築し、中国を牽制しているように映っているみたいですが、僕には戦略的リーダーとして機能しているとはとても思えないんですけどね。
戦略のプロが言うからにはもしかして、そうなんでしょうか。どうにも腑に落ちない点ではあります。
その他、尖閣諸島を巡る中国との問題や、北朝鮮との関係についてもかなり突っ込んだところまで言及しています。
現在、両問題はハッキリいって日本にまったく主導権がなく、「なるようになる」みたいな感じになっていますよね。
著者のいうところでは、それが最悪な対応なわけです。「いくらなんでもそれはやらないだろう」と高をくくっているような考えがこそが戦争勃発に繋がると。
平和を叫ぶことは簡単にできますが、平和を維持するにはそのための戦略が必要です。日本は果たしてこんな状態でいいのかと、大いに考えさせられます。
現代のみならず、武田信玄・徳川家康・織田信長を評しているところなんて、余計に日本人が読むと喜びますね。橋本市長まで登場していて、これは出版社の誘導尋問のような気がしますが(笑)
ちなみに信玄は最高の戦術家、家康は最高の戦略家、信長は両方備えたバランス派とのことです。
総評
いやいや、僕はこの本めっちゃ好きでしたねぇ。近年流行の地政学本のにも分類されるんだと思いますが、戦略と戦術の話は歴史ファンとしては非常に興味深いです。
戦術レベルの勝利は戦略的視点で見ると何の意味もなさないというのは、ナポレオンや日本軍が証明しているとおりです。
そして戦略は政治に勝るというのも歴史が示しています。ニクソンの米中関係改善がもっとも解りやすい例でしょう。
著者は外交、すなわち同盟が最強の戦略であると述べています。徳川家康に最大級の評価をしているのはその点においてです。
戦争を起こす前に外交で決するというのは、孫氏の兵法、基本中の基本ですね。それは現代においても同じということです。
大局を重視する戦略においては、時として人命を軽視せざるを得ない局面があります。それが確実な勝利に繋がるのであれば、なおさらです。
人権は確かに大事ではありますが、国を守るか人権を守るか、国民がどちらを選ぶかということはトランプ、プーチン、ドゥテルテを見れば明らかですね。
国際関係はきれいごとでは片付かないのです。翻って我が国は、国際問題を考えるスタートラインにも立っていません。
モリトモやカケに費やしてる時間は全部ムダなんですよねー。日本はアメリカが「世界の警察」を演じることを放棄した今、軍事力と平和について全力で考えなきゃいけないんですよ。ほんと。
ということで、僕の現政権嫌いはこのぐらいにしといて、他にも「ヨーロッパはいずれ消滅する」なんて、一見メチャメチャな説ですが、筋が通っていたりして、非常に含蓄あふれる一冊でした。
最後はちょっと長いですが、僕が最も共感する著者のことばでもって締めておきます。
平和をもたらすのは、唯一、戦争だけだ。
もしこのメカニズムを止めてしまえば、それを止めた当事者が平和をもたらさなければならなくなる。
そのためには、大規模な軍隊の投入が必要となり、地域の治安を確保して住民を安心させ、ならず者は全員撃ち殺し、その地域を50年間にわたって統治しなければならない。
【書評】小泉進次郎と福田達夫
287P
著者 田崎史郎
読みやすさ ★★★★★
小泉進次郎という男はどのような男なのか?小泉純一郎元首相の息子でイケメンで人気抜群。僕の手持ちの情報はそれだけでした。少なからぬ人が同じような印象を持っているのではないでしょうか。
本書は進次郎だけではなく「あなたとは違うんです」のセリフで一世を風靡した(してない)福田康夫元首相の息子、福田達夫との対談本です。
読後、きっと小泉進次郎の印象は変わります。
目次
小泉進次郎と福田達夫のプロフィール
それでは簡単に2人の略歴を紹介しましょう。
1981年生まれ。関東学院大学卒業後渡米。コロンビア大学大学院卒業。父・小泉純一郎の秘書を務め2009年の衆議院選挙で初当選。以来、現在まで4選の現職。
1967年生まれ。慶応大学卒業後、三菱商事に就職。父・康夫が官房長官を務めた2004年に退社し秘書を務める。2012年の衆議院選挙で初当選。いわゆる「魔の2回生」世代。以来、現在まで3選の現職。
ということで、進次郎は民間を経験せずに議員になった一方、達夫はいちど商社大手の三菱企業で働いています。
ちなみに達夫の父(康夫)と祖父(赳夫)は共に元総理なので有名ですが、進次郎も純一郎元首相だけではありません。曾祖父から4代続く衆議院議員家系です。
2人ともバリバリの世襲議員なわけですが、両者共、父親が跡を継がせようとしたわけではありませんでした。
純一郎氏は息子2人に「おまえたちは政治のことは考えなくてはいいからな。好きなことをやれ」と子供の時分よりずっと言っていたそうです。
長男、孝太郎氏が俳優になったのはご存知の通りですが、進次郎は大学生のとき、既に跡を継ぐと父に宣言していました。
一方の達夫も父から「政治というのは継ぐ仕事じゃない。だから、継ぐという考えは必要ない」と言われていました。政治家を目指すことになったきっかけは、父が官房長官時代にスタッフが足りずにヘルプで入ったことでした。
当初は三菱商事に帰るつもりが、諸事情でなし崩し的に政界に居残ることになり、イヤイヤというわけではないのでしょうが、結局跡を継ぐことに。
動機としては進次郎の方が遥かに高いといえるでしょう。
小泉進次郎と福田達夫の内容
本の内容的には序盤は前述したような世襲あるあるから始まり、親父トークがあって、あとはほとんどが農協に絡む2人の仕事内容に費やされています。
で、最後は2人を知る第三者からみた進次郎と達夫話。このパートで菅官房長官のインタビューがあるのが興味深いところです。
仕事ぶりに関しては一回り以上年下の進次郎が、部下として達夫を招いてこき使うところが非常に面白いですね。
こき使うというと語弊があるかもしれません。対談中、何度か出てきますが進次郎は父と同じ猪突猛進型のタイプです。
大将自ら先陣を切って乱戦に持ち込み、後処理や根回しを達夫がする。この構図は小泉純一郎元総理とそれをサポートした福田康夫官房長官と同じです。
飛信隊の信とそれを支える河了貂と羌瘣みたいな感じですかね(笑)あえて使われる達夫の懐の広さが、なんかいい感じで好感が持てます。
「ワンフレーズ首相」なんて呼ばれた小泉元首相ですが、なぜワンフレーズかという理由も語っていまして、要はいっぱいしゃべるとマスコミがいるところだけ使うからです。
「関与してたら議員を辞める」とかいらないこと言わない方がいいんですよね(笑)
その他、やっぱり小泉純一郎エピソードはこの本の見所のひとつなので、詳しくは書かないでおきます。
小泉首相の後世の評価はもうちょっと先になるんでしょうが、功罪あるのは間違いありません。
僕は現役総理のときはあまり好きではなかったのですが、彼以後の総理と比べるとちゃんと総理大臣してましたよね。
政治家小泉純一郎ではなく、父親としての姿が書かれているんですが、父親としてもやっぱり常人にあらず非常に絵になる男です。
進次郎もこれから偉くなっていって型破りな男になっていくのかな。
総評
おぼっちゃん達の雑談本だと思って読み始めたんで、めちゃめちゃ印象変わりました。というか、むしろさっさと「お前ら早くトップまで駆け上がれよ」とまで。
日本の政治体制はおかしいんですよね。長老大杉で。何年も前から言われ続けてることだけど、普通に考えて70歳の爺さんが100年先の日本のこと考えて政治しないよね。
彼らぐらいの世代がもっと政権の中枢に食い込んでいってくれないと、100年後、日本は無くなりますよ。
で、おぼっちゃんなんて勝手にレッテルを貼ってましたが、少なくとも進次郎はけっこう順風満帆というわけではないということを知りました。
そもそも実母知らずに育ったていうだけでも、なかなかにハードなわけですが、初めての選挙でも世襲のシンボルのように扱われる逆風の中、政治人生をスタートさせてるんですね。
感じたのは進次郎は、出だしでマスコミに大バッシングくらって、手のひら返しを目の当たりにしてるんで、めちゃめちゃ警戒してます。恐怖心と嫌悪感が入り混じってる感じじゃないでしょうか。
そして、総理の息子に産まれるのは絶対イヤです。進次郎の子供のときのエピソードで強烈なのがありました。まぁこんな感じです。
「ねぇ君コイズミくんだよね」
「そうだよ」
「お母さんがギインの息子だから仲良くしときなさいだって」
「・・・」
最低なオカンおるな!(笑)
僕はこんな環境で健全に育つ自信がないです。
とまぁ、なんだか礼賛するみたいな感じになっちゃいましたが「政治の未来」を久しく感じることがなかったので、若手議員の思っていることを読んで少し心が晴れやかになったわけです。
そりゃまあ、まだまだ青臭いのかもしれないんですけど、人々が期待し夢を見るのは、その青臭さになんですよね。
ちょっと触れるスペースがあまりにも少なすぎましたが達夫さんにも、かなり期待しています。なんたって商社で培った民間とのバランス感覚の持ち主です。いつか大臣として発揮して頂きたい。
それでは将来への期待の意味も込めて進次郎の熱いハートをお伝えする言葉で締めたいと思います。
淡々としていたら、政治はできない。
熱くないと。
それは、やっぱり政治は人だから。
【書評】CHAVS(チャヴ) 弱者を敵視する社会
392P
著者 ジョージ・オーウェル
読みやすさ ★★★
「チャヴ」とは下流階級労働者を侮辱する言葉。本書は本国イギリスでは14万部のベストセラーとなり、世界各国に翻訳されています。
原題で出版された時期は2011年。なぜ6年も経った2017年に邦訳されたかというと、2016年6月の「ブリグジット」によって、英国の格差社会に改めてスポットが当たったからですね。
アメリカもしかり、日本においても近年は「格差問題」がトレンドです。(流行というと不謹慎ですが)
イギリスとフランスの波はいずれきっと日本にも押し寄せます。だってこの本に書いてあることは、もう日本にも起きていることだから。
目次
CHAVS(チャヴ) 弱者を敵視する社会はどんな本か
あらすじを書くような本でもないかと思うので、端的に中身を紹介しましょう。
チャヴがいかにして現れたのか、その源泉をサッチャーが新自由主義に舵を切った時代に求め、移民をスケープゴートにして問題の本質がそらされている現代までを数字や実例を交えながら綴っています。
まず「チャヴ」のイメージを明確にしてから読めば早いというか、読み始めたらきっとみんな思うに違いありません。
日本でいうところの「DQN」ですね。
事件や騒動を起こしてはネットで職場や学校、住所まで晒され吊るし上げられ、攻撃と嘲笑の対象になっているという点でまったく一緒ですね。
ためしに「You Tube」で「chavs」を検索してみてください。イメージが掴めるかと思います。こんな感じで解りやすい悪意たっぷりの動画がいっぱいありますわ。
DQNの定義なんてものはないんですが、どちらかというと昔でいうところの「ヤンキー」の延長線上にあって、その点チャヴには「この貧乏人が!」みたいな意味が含まれているような気がします。
で、本書で著者が言っているのは彼らの悪行を肯定しているというわけではなく「こんなことなったん誰のせいやねん!」てことです。
ページ数多いですけど、削ぎ落せば要点はそこ。
特権階級者が国の中枢を占めて、それはマスコミやミュージシャンにまで及び、もはや労働者階級出身者の人間には何のチャンスもないと。
エスタブリッシュメントが悪いんか、チャブが悪いんか。
「努力したら抜け出せるやん。貧乏もバカもテメーのせいでしょ?」
この思考が正しいのか否か。それを考えるのが読者の役割です。
英国を揺るがした事件とチャヴ
本書でチャヴとの絡みで紹介されている以下の3つの出来事について、僕はひとつも知らなかったのですが、非常にセンセーショナルな事件です。
ヒルズボロの悲劇
1989年に行われたFAカップの準決勝、リヴァプールVSノッティンガム・フォレスト戦において、ゴール裏の立見席に収容人数を明らかに超えた観客が殺到しました。
結果、死者96名、負傷者766人というイギリスのスポーツ史上最悪とも言われる事故に。
当初はリヴァプールサポーターに責任が押し付けられていましたが、後に誘導に当たった警察に非があったと判明。警察の隠ぺい工作も明るみに出ています。
マデリーン・マクカーンとシャノン・マシューズ誘拐事件
2007年に誘拐されたマデリーン・マクカーン(当時3歳)がポルトガルの高級リゾート地で姿を消し、国民的な大事件となった。(現在も行方知れず)
一方で2008年に失踪したいわゆる「貧困層」の子シャノン・マシューズ(当時9歳)はマデリーンに比べて報道される回数は圧倒的に少なかった。
後に無事生還したが、実母が懸賞金目的のためにやった狂言誘拐だと判明した。
ジェィド・グッディ
リアリティ番組「ビッグブラザー」への出演をきっかけに有名人に。チャヴの典型のような彼女の言動は知名度の上昇と共に英国中から非難を浴びた。子宮がんを患い、27歳で死去。死の間際までメディアに出演し続け物議を醸した。
なんでしょう。亀田兄弟とその親父とビッグダディと美奈子とテラスハウスを合体させてもっと凄くした感じでしょうか。
著者はこういうメディアの在り方にも疑問を投げかけているんですが、日本でも古くはガチンコとかそうですよね。
あれは共感を求めるんじゃなくて完全に嘲笑狙ってるやつだし。今はコンプライアンスだなんだと言ってできなさそうな企画ですが。
マデリーン誘拐事件も、ジェイド・グッディのこともググるとこの方の記事が出てきますね。
イギリスをヲチしている方で、参考になりますね。
エスタブリッシュメント(特権階級)が支配する国
「エスタブリッシュメント」ということばはアメリカ国民がトランプ大統領を選んだくだりでよく出てきましたね。
生まれつき金持ち、何の障壁もない人生、エリート街道を突き進んで余裕で政治家。金持ちが金持ちのために政治を行い、どんどん広がる格差。
しまいにはエスタブリッシュメントさん達は労働階級の人間と顔を合わすことすらなくなって、その子供たちは貧困層と会ったこともなくイメージすらできないっていう。
お前らは「天竜人」か。
こんなバカみたいな話がすでに、先進国とかいう国でまかり通ってしまってるわけで、それは日本も例外じゃないんですね。
現在の第四次安倍内閣の閣僚の略歴を見てみましょう。
説明不要のただの金持ち。父・衆議院議員、祖父総理。小学校から大学まで成蹊という受験すらしない堕落したエリート
同じく言うに及ばないただの金持ち。父九州のドン、祖父総理。学習院大卒。
祖父大臣。上智大学卒。
東大卒。
祖父・父共に副総理。慶応大中退後、海外をフラフラする。
父・大臣。東大卒。
祖父、日野自動車社長、義父大臣。東大卒。
東大卒だが、公式HPで確認する限りは特権階級者ではなさそう。
東大卒。
父内科医・東大医学部助教授、義父参議院議員、祖父東大教授。東大卒。
義父、気仙沼市長、東京水産大学卒。気仙沼の老舗旅館の息子。庶民感覚は持っていそうに思える。
法政大卒。町議員と教師の息子ではありますが、苦労してるし庶民の心もわかるはずの人物だと思うんですけどね。総理ではなく、国民の方を向いてほしいです。
実家は福島の木材会社。早稲田大学卒。
祖父衆議院議員、父大臣。玉川大卒。
父大臣、立教大卒
灘高校、東大卒。
父福岡県議員、明治大卒。
内閣府特命担当大臣 茂木敏光
東大卒。小中高公立なんで階級というより頭がいいんでしょう。
父総理、早稲田大卒
どないですかー。解りやすいように色分けしてみました。読んでてもイヤになってくるでしょうが、書いててもイヤになってきました。
父ちゃんや爺ちゃんが議員や閣僚経験者なだけで大臣な人がいっぱいいますねぇ。もしくは東大出ないとダメですね。
全員ではないですけど、この人たち国民ってどんな人か知ってるんですかね。これだけ偏りがあると東大卒の人がやろうが、普通の人がやろうが政治なんてあんまり変わらんように思えます。
いや、むしろ庶民感覚を持った人が上に混じってないとメチャメチャなりますよね。
じゃあ頑張って東大入りますかという話ですが、東大生の半分以上が親の年収950万円以上という過酷な現実があります。
ということで、この世に産まれ落ちた瞬間から政治の中枢に入り込む余地は、ほぼありまへん。身分は金で買うという前時代的な構図は現代においても受け継がれているわけです。
自己責任について
犯罪も悪人も悪いんですよ。もちろん。僕も隣人が粗暴なヤツだったら普通にイヤです。家の間にたむろされてももちろんイヤです。
自分に置き換えるとそうなるんですけど、じゃあ粗暴な行いをする人たちは生まれつき悪人だったのかという話です。
子育てをするようになって、強くそう感じるようになりました。子どもが悪人になっていく過程で最も責任があるのは親に違いないです。
イカれた親のせいで、教育もロクに受けられない。進学できない、仕事も金もない。生活保護は非難されカットされる。
こんな人生を提供されたらどうしたらいいんですかね。
飲んだくれるか暴れるかシャブやるかセックスやるしかなさそうです。僕もきっとそうします。
この環境下に産まれた赤ちゃんなんてさらに選択肢がないわけですが「自己責任」なんて言えるでしょうか。
「努力したら抜け出せるじゃん」て言うのは、努力したら抜け出せる立場にいるからということは本書を読めばわかると思います。
おすすめする関連本
この本を読んで「ほう」となる人なら以下の本もピッタリハマると思います。
ブレイディみかこさんはちょっと変わった経歴の持ち主です。イギリスで保育士として勤めるかたわら執筆活動をしていて、最近とても売れっ子ですね。
ノンフィクションというよりエッセイの色合いが濃いのですが、問題の本質はしっかり書かれていて、しかも日本人ということでスッと入ってきます。
研究者や学者ではないので視点が庶民目線というところがいいですね。
これは格差社会のアメリカ版で、本書と重複する点が多々あります。ブリグジットとトランプ政権誕生の根っこが同じということが見えてきますね。
イギリスもアメリカもほんとやだなーと思うんですが、読んでみると我が国もまったく他人事ではなくて、子育て世代の親としては暗澹たる気分になるんですが、読んでよかったです。
総評
関心のあるテーマなんで、かなり内容が乱雑になってしまいました。
本書は少々扇情的な面は否めないのですが、世界各国で読まれているということはみんな気づいているんですよね。
「今の世の中腐ってね??」て。
僕は日本の衰退とともに成長してきた生粋の氷河期世代ですが、やっぱり司馬遼太郎の明治時代回顧的に、「昭和末期は貧乏だったけどいい時代だったなー」なんて思います。
ゴリゴリの労働階級家庭生まれ、かつ団地っ子だった身としては、日本もイギリスみたいになると、とても複雑な心境です。もうなっているのかもしれないけど。
「子供時代が不幸だった」なんて一度も思ったことないですしね。
触れたい箇所多すぎて全然書けなかったんで、ぜひ本書を手に取って読んで欲しいです。
ひじょうに長くて煩わしい記事になってしまいましたが、最後に著者の記した希望の言葉でもって締めくくりたいと思います。
馬鹿にされるかもしれない。無視されるかもしれない。
それでも、彼らはいつかきっと、「この声を聞け」と、ふたたび立ち上がるにちがいない。
【書評】明治という国家
- 312P
- 著者 司馬遼太郎
- 読みやすさ ★★★★★
2017年は「維新150年」ということで関連本がたくさん出版されました。本書は2018年発売ですがそのうちの一冊です。
そもそもは1989年に放映されたNHKスペシャル「太郎の国の物語」を書籍化したものなので、メチャメチャ古い本です。
司馬さんの幕末・明治観が全11章にわたって簡潔にまとまっているので、いわゆる「司馬史観」を俯瞰するには丁度いいでしょう。
ひとつケチをつけておくと、その件に関して出版社からの説明が一切書かれていないとうのはいささか不親切な気がします。
目次
この本を読んだ理由
改めて本書を手に取ったのは理由があります。上述した明治維新関連本を読んでいる中で、司馬さんがとても悪し様に書かれている本がありました。
具体的にはこの2冊です。
いずれも司馬遼太郎の明治賛美の対極にある歴史を伝えるもので、僕が知らない歴史を学ぶいい機会になりました。
僕たちが習った幕末~明治維新はこんなもんでした。
とまあ1990年代の授業では大筋こんな具合でした。
これに司馬遼太郎の小説が手伝って、またそれが面白いもんだから、すっかり「薩長と龍馬スゲーな」という意識が自分にも刷り込まれていました。
ですが、史実は全然違ったようです。このへんの誤りが上記2冊を読むとわかるかと思います。
で、まぁ言われるわけです。「司馬遼太郎の誤りのせいで日本人みんなが誤解している」と。
僕は司馬さんの小説が好きですが、彼を歴史家だと認識して本を読んだことはありません。
「キングダム」を読むのと同じように、フィクションを交えて面白ければいいわけです。北方謙三の三国志も同じです。作り話でいいのです。
それならノンフィクションならどうなんだということで、この「明治という国家」を読んでみることにしたわけです。
司馬遼太郎の誤り 坂本龍馬
これはもう先日、坂本龍馬が教科書から消える騒動でもあったとおり、司馬さんが評価しているような龍馬の功績というのは史実ではないという説に傾いています。
「船中八策」がそもそも龍馬が発案したものではなく、「薩長同盟」も龍馬によって仲立ちされたという史実が誤りであるようです。
グラバー商会の代理人として武器の仲介役をしていただけというのは身も蓋もない話ですが、悲しいかなこっちの方がしっくりくるような気もします。
本書でも司馬さんは龍馬のことをガッツリ褒めたたえています。まぁ司馬さんは大正生まれですからね。
小説家に事実誤認があったとしても、取り立てて糾弾されるようなことではないんですが、人気がありすぎたせいで後の世になって槍玉に挙げられるというのは皮肉な話です。
小栗忠順という男
小栗忠順という人物の名を聞いたことがあるでしょうか?
彼は教科書にも載らない幕末の騒乱に露と消えてしまった不世出の天才です。あらゆる書を読んでも小栗を讃える話しか出てきません。
司馬さんも彼を「明治の父」と評しています。
幕臣として江戸幕府の近代化を推進し、現代にも残る横須賀造船所の礎も建設しました。
最期まで幕府に殉じ、42歳の若さで処刑。戊辰戦争においては必勝の戦略を徳川慶喜に献策するも、慶喜はこれを却下して敵前逃亡してしまいます。
敵方の大村益次郎が「その策が実行されていたら今頃我々の首はなかったであろう」と言ったとうエピソードがとても有名です。
戦う意思のない大将を選んだ時点で小栗の命運は決まっていたわけですね。
司馬さんは小栗忠順だけではなく、権力は薩長が握って実務は旧幕臣に頼っていた旨を述べています。
なので、この辺の歴史認識は教科書で習う「幕府パッパラパー説」とは違いますね。僕も全力で政府に尽力された旧幕臣の方たちに謝りたいです。
明治のキリトリについて
司馬史観が議論を呼ぶところの最大の点は、明治時代だけを非連続性の時代としてとらえているところでしょう。
本書の終盤ではこのように述べています。
十九世紀のアメリカ東部に展開したプロテスタンティズムという精神の社会が~中略~歴史の中で独立し、ときには連鎖せずに孤立しているとみるほうがより親しみぶかく感じられるように、ある時期の世界史にそういう国があったと見るほうがわかりやすい。
さらには、そのほうがーつまり明治国家がいまの日本人の私物ではないと考えるほうがー私の気分をくっきりさせる
「 あったと見るほうがわかりやすい」「私の気分をくっきりさせる」というのは、つまり小説家司馬遼太郎が、物語を書く上でその方が面白くなると言っていると僕は解釈します。
繰り返しますが司馬遼太郎は歴史家ではなく小説家です。時代小説に歴史考証は不可欠ですが必要なのは真実ではなく、どうしたら面白いかです。シェイクスピアもしかりです。
最高に極端な例を出してアレですが、キン肉マンのストーリーに整合性を求めるぐらい不毛なことですよ。フィクション作家にケチをつけるというのは。
小説家の発言がその影響力の絶大さゆえに歴史家の発言としてひとり歩きしてしまったというのが僕の印象です。
総評
今回、僕が意識して読んだ分だけを取り上げましたが、出版当時からまったく色褪せない話が他にもたくさんあります。
実は坂本龍馬に関しては余談程度で触れるぐらいで1章割いていなかったりもしますし。
司馬さんはあくまでも小説家として題材を幕末~明治に求めただけで、真実を追及していたわけではありません。
それはこの本を読んでいても感じます。戦争体験による昭和軍国主義への憎悪が明治時代へのロマンチシズムに向かったという評価はおそらく正しいのでしょう。
司馬遼太郎の歴史認識がたとえ誤りであったとしても、それが彼の創造性をかきたてたのであれば、後世その作品の世界観を楽しんだ僕には何ら迷惑なことではありません。
真実は学者が追及して発表すればいいんですから。正しい説には勝手に人が集まってきますよ。多分。
なんか国会を見てるとそうも言えない気もするけど。。。
とうことで、あえて司馬さんの坂本龍馬評にて締めておこうと思います。
坂本の風雲の生涯は、印象として奇策縦横にみえますし、事実そうでした。その発想は現実の泥ぬまー幕藩体制や身分制ーからわずかに超越してその観念(国民国家という)を宙空に置いていたからでしょう。
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【書評】月明かりの男
- 362P
- 著者 ヘレンマクロイ
- 読みやすさ ★★★★★
舞台はニューヨーク。大学の研究所で殺害された教授。銃身はあるのに、銃弾が見つからない。逃走する犯人を目撃した人間が3人いたが、証言がすべて食い違っている。その謎に挑むのは警察お抱えの精神科医ウイリング博士。
この設定だけでもミステリとしてかなりそそるんではないでしょうか。パパっと読める王道ミステリです。
目次
著者 ヘレン・マクロイ
本書を語る上で、まず著者のヘレン・マクロイのことを上辺だけでも理解しておいた方がいいでしょう。
ヘレン・マクロイはアメリカのニューヨーク出身の女性作家です。で、ここポイントなんですけど1904年生まれで90歳で既にお亡くなりになっています。
本書は2017年の新刊なんですが、原題「The man in the moon light」の初版はなんと1940年!第二次世界大戦中のことです。
初版から80年近くを経て邦訳が出たわけです。物語の謎解き役であるベイジル・ウイリングを主人公としたシリーズは13篇もあるのですが、本作は2作目に当たります。
こちらにかなり詳しくわかりやすく列挙してくれているサイトがありました。
13作が激しく順不同で邦訳されているので、出版された順に読んでいくととてもおかしなことになりそうですが、本作が初めてだった僕の感想としてはスムーズに世界観に入り込めました。
僕も後で思ったのですが、これを知ると一作目から読みたくなるのが男の収集癖というものです。が、とりあえず、本作からスタートしても大丈夫。
あと、もうひとつこれを最初に説明しておいたのは戦時中の作品であるということを念頭におかなければ、世界観がなんだかおかしくなるからです。
アメリカ人と中国人とドイツ人が出てくるという、当時の国際情勢丸出しなので、それぐらいは踏まえて読み進めた方が「ん?」ってならないと思います。
月明かりの男はこんな話
ミステリのあらすじはあんまり言わない方がいいと思うので、本当に簡単になんとなくの概略を書いときます。
物語の構図的には「金田一君」的なノリをご想像頂けるとわかりやすいかと思います。第一の殺人発生。さらに被害者が出る。「犯人はこの中にいる!」的な感じで。
容疑者は絞られていくので犯人当ては難しいものではないと思いますが(ちなみに僕はサッパリ思い至らず)、核心となる証拠を読みながら見つける人はとんでもない頭脳の持ち主なんじゃないですかね。
相棒の右京さんや古畑任三郎が言うあれですよ。「あの時あなたが犯人とわかってましたよ」みたいなやつ。
僕はそれ読んでも理解するのに活字を舐めるように見ましたわ。この謎を初見で解けるような人はぜひとも今の職を投げうって、未解決事件を解決する業務に従事してほしいです。
国会で証人にイヤらしい質問をするとかもぜひお願いしたい。
話が飛びましたが、本作は時代の古さを多少しか感じさせず、ラストに近づいてもまだ真相に近づけない構成となっているので、あっという間に読めちゃうと思います。
総評
「理系探偵」というと現在ではありふれた設定ではあると思いますが、当時としてはかなり斬新だったのではないでしょうか。
物的証拠ではなくて心理的側面から真相に迫っていく手法ゆえに、スマホやネットがなくても古臭さを感じさせません。
ぜひともシリーズを通読してみたと思わせてくれるきっかけになる一冊でした。
では精神科医らしいウイリング博士のセリフで締めたいと思います。
独創的な嘘は嘘つきにとって危険なのです
本人が抑えることのできない無意識の操作がふくまれていますので
【書評】師弟
もうすぐ2018年のプロ野球ペナントレースが開幕します。本書は、昨年96敗という絶望的としか言えない成績だったヤクルトスワローズの元監督ノムさんと、ヘッドコーチに就任して鬼軍曹ぶりが連日取り上げられる宮本慎也との共著です。
ノムさんは本書文中で述べている時点で著書が120冊(笑)けっこう読んだつもりですが、1割も読んでませんでした。
それだけ書いてるので内容はカブりまくってるんですが、なんか読んでしまうんですよね。新ネタが見たくて。
今回は共著ということで、ネタに広がりを見せています。
目次
野村克也 監督として
宮本慎也 選手として
師弟 見どころ
- 川崎にシュート伝授
- 小早川開幕戦で斉藤雅から三連発
- 新庄にピッチャー
- 松井を退けて伊藤智仁を1位指名
- 外野手監督不適合論
真中満について
2015年の日本シリーズについては「真っ向勝負、力勝負を挑んでいるように映った。(野村監督の教えである)弱者であることを武器にし損なった」と評しています。
確かに同年のヤクルトはあまりにも無策に敗れ去り、ソフトバンクの強さだけが際立ったシリーズでした。
近年の日本シリーズは2013年の巨人VS楽天を最後にまったく盛り上がりを欠く展開になっているのは、弱者たるセリーグの無策ぶりのような気がします。
バレンティンについて
「ピッチャーゴロを打ち、バッターボックスから一歩も走らずに帰ってきた選手を、初めて見た」
バレンティンの左翼の守備はほんとスゴいですよね(笑)あれは投手と険悪なムードにならないのでしょうか。
2018年、宮本コーチは彼の緩慢プレーを改めることができるのか。
谷繁元信について
「ときどき使うインコースのタイミングが絶妙」で、現役時代ほとんど打ったことがないと絶賛しています。
仁志敏久について
山本昌について
「振りかぶったとき、口をキュっと結んでいたらストレートで、反対に緩んでいたら変化球」
対山本昌との通算成績が気になるところです。
菊池・今宮について
「二人とも守備範囲が広く、肩も強いので、華やかに見えますが、そのぶん細部はまだ洗練されていません」
現役2トップの内野手と呼んでもいい彼らについて、10年後に答えは出ているでしょう。
とまぁノムさん譲りの批評が他にもあります。鋭い観察眼と「見えないモノを可視化する能力」は文筆家として優秀です。
今後、監督として成功することがあればきっと著書はたくさん売れると思います。目指せ120冊!!
総評
僕は宮本が選手時代から言っていたと思うのですが「野球を楽しいと思ったことはほとんどない」という言葉が非常に印象に残っています。
シーズンオフの間、「うるさ方」としての宮本コーチの姿がジャンジャン報道されていますが、嫌われても怒る。言うべきことは言うというのが本書を通じても伝わってきます。
この本は2016年初版なので、当時はまだコーチとしての打診もなかったわけですから、シーズン直前の今になって読んでみると「有言実行やなぁ」と頷く。
山田選手への言及は僅かでしたが、今シーズンのヤクルト浮上最大のカギは山田が復活するか否かというところでしょう。
本書を通じて語られる、野村、宮本イズムが果たして現代のヤクルトに受け入れられるのか注目です。山田がまた悪いようだとチームが空中分解ということが心配されます。
私見では監督ではなくヘッドに据えたのは禅譲路線で、チーム状況が厳しいということでとりあえず小川監督に矢面に立ってもらっているんではないでしょうか。
文中でも宮本は小川監督がスカウト時代に獲ってもらったと感謝の弁がありますので、2人の関係は良好なのでしょう。
そしてノムさんはほんんんっとに野球オタクなんですね。そんなノムさんが僕は大好きです。ストライクゾーンを9つに分ける野村スコープは特許取っておけばよかったのに。あれがないと今の野球ゲームは機能しないですよ笑
でも、ノムさん。心配です!!2017年にサッチーが急死してから、ドンドン元気が無くなってるじゃないですか!僕はもっともっとノムさんの本が読みたいです。
最後にノムさんから宮本へ贈る言葉で締めたいと思います。実現してノムさんを元気づけて!!
ただ、ひとつ、ささやかな夢があるとすれば、宮本と、稲葉が監督として、対戦するところを見てみたい。二人がどんな野球をするのか。
こんな弱気な言葉だけでは寂しいのでノムさんらしい名言をもひとつ
負けは、負けたと思った瞬間が負けであり、負けだと思わなければそれは勝利につながる